伝説の3蒸留所、復活のニュースが飛び込んできた!
スコットランドには130か所を超えるウイスキー蒸留所が存在しています。
新しく誕生する蒸留所があれば、時代の荒波に飲まれて閉鎖した蒸留所も数多く存在します。
閉鎖してしまった蒸留所の中には、その味わいや希少価値から、もはや伝説的な扱いをされている3つの蒸留所があります。
それが 『ブローラ蒸留所』 『ローズバンク蒸留所』 『ポートエレン蒸留所』です。
この3つの蒸留所のウイスキーは、一本数十万円から数百万円といった骨董品のような金額で取引されるほど、いわば別格の存在なのです。
なんと!近年、この3つの蒸留所から相次いで操業再開が発表されたのです!
今回は3蒸留所の基本情報や味わいの特徴、復活の裏側、最新情報を分かりやすくご紹介して行きます!
ブローラ蒸留所って!?
ブローラの基本情報
ハイランド地方にて1819年創業、1983年に閉鎖。
ジョニーウォーカーに多くの原酒を供給していたブローラでしたが、ウイスキー不況(いわゆるウイスキー冬の時代)の煽りを受け、閉鎖をしてしまいました。
ブローラの名称にはやや複雑な歴史があります。
現在、同じ敷地内に1967年に創業した新しいクライヌリッシュ蒸留所があります。もともと古いほうの蒸留所(現ブローラ)をクライヌリッシュと言っていたのですが、1967年に新しい蒸留所が建てられた
のを機に、新しいほうをクライヌリッシュ、古いほうをブローラに改名しました。
そのため、ブローラ名義としては、1969年から14年間だけ操業して、1983年には閉鎖されている事となります。
「ブローラ」が気になった方はぜひ、弟分である「クライヌリッシュ14年」を味わってみて下さい。高価過ぎる兄貴分に比べ、リーズナブルながら素晴らしい味わいが楽しめます。
味わい
ブローラはリリース時期によって大きく味わいが異なるので、その特徴を一概に語るのは難しいと言われています。
あえて表現するならば、ドライフルーツのような凝縮感とバニラ香。オイリーさとピート感が、フルボディかつ絶妙なバランス。と言えるでしょうか。
ローズバンク蒸留所って!?
ローズバンクの基本情報
ローランド地方にて1840年創業(所説あり)1993年閉鎖。
名前の由来は、蒸留所近くの運河の堤(バンク)に、野生のバラが咲き乱れていたことに由来しています。
操業当時、ブレンダー達に「ローランドの王」と呼ばれる程、ローズバンクの味わいは大変人気がありました。
その理由は、ローズバンクのウイスキーが、華やかなトップノート(一番初めに感じる香り)を持っているから。ブレンダー用語でいう「トップドレッシング」の長所を持っていたからだと言われています。
素晴らしいウイスキーを世に送り出し続けたローズバンクも20世紀に入るとウイスキー不況に飲み込まれ、経営悪化のため閉鎖されました。
味わい
ローズバンクの味わいは、一言で表現するならばライトでドライ。アーモンドやキャラメルのような優しい甘味、デリケートな味わいとスムーズさ。でしょうか。
ローランド地方でつくられるウイスキーの伝統に従い、ローズバンクも3回蒸溜により造られます。
この伝統的な製法を使うことでウイスキーの風味が軽くなり、ライトでドライ、穏やかでやや穀物味のある香りが表現されています。
ポートエレン蒸留所って!?
ポートエレンの基本情報
アイラ島にて1824年創業、1983年閉鎖(紆余曲折あり16年間しか操業していません)。
幻のウイスキーと聞いて最初にこの蒸留所を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。
実はポートエレン蒸留所の稼働中にはシングルモルトウイスキーとしてのリリースはせず、全てブレンデッド用の原酒として出荷されていました。
蒸留所を閉鎖した後に、残った原酒をいくつかのボトラーズ会社がシングルモルトとして販売した事で、人気に火が付きます。
しかし、リリース本数の少なさ、熟成年数の長さが原因ですぐに売り切れてしまいました。そのため、世に流通したボトルの価値が右肩上がりで高まり続けたのです。
スコッチウイスキーの聖地、アイラ島で素晴らしいウイスキーを造り続け、世界中に熱狂的なファンを生み出したこの蒸留所も、ウイスキー市場の低迷により閉鎖。
閉鎖後、蒸留は終了しましたが、モルティング(製麦)施設のみの稼働を続け、
アイラ島の他の蒸留所へモルトを供給していました。
味わい
ポートエレンは、スパイシーでドライな味わい。華やかな香味が特徴と言われています。
もちろん、アイラモルトらしいスモーキーさとピーティさも十分感じる事ができます。
ですが、アイラモルト全体の中ではピートの強さは真ん中くらい。
ガツンと来ると言うよりは、優しく包み込むようなピート感であるとされています。
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どうして復活するの?
閉鎖から数十年が経過した蒸留所を復活させることは容易ではありません。
建物の改修、蒸留器の復元、発酵槽や熟成樽などの設備の整備、プロフェッショナル人員の確保 等。数億十億円から数百億円の投資が必要になります。
それでも、復活に乗り出したのには大きく3点の理由があります。
1. 世界中のウイスキー愛好家からは、これまでも熱烈な復活の要望がありました。それに応えたいという機運が高まったから。
2. 価格の高騰し過ぎた3蒸留所のウイスキーはもはや、一般庶民には味わう機会が無いのが現状です。その現状を打破したいという思いから。
3. 既に絶大な知名度と人気を誇る3蒸留所であれば、商品リリース後に投資分を回収出来るだけの十分な収益が見込めること。
ファンの期待と、企業としての思惑。その両輪が嚙み合ったワケですね!
3蒸留所それぞれの最新情報!
ブローラ蒸留所は今!
【新蒸留所マネージャーのスチュワート・ボウマンが最初の樽を倉庫まで運ぶ様子】
2017年10月にオーナーであるディアジオ社より復活が発表され、4年間に渡って建物やポットスチルの改修工事が行われていました。
新型コロナの影響でプロジェクト進行に遅れが生じたものの、無事に改修が完了。
2021年5月に稼働を再開し、1983年以来38年ぶりに蒸留と最初の樽詰めが行われました。
年間約80万リットルを生産する計画をしており、当時の味わいを再現するために奮闘しています。
すでに試飲を含む観光ツアーの申込も可能のようです。
ファーストリリースが何年後になるのか、今からワクワクしますね!
ローズバンクは今!
【新蒸留所完成予定イメージ】
2017年10月にイアン・マクロード・ディスティラーズ社がローズバンク蒸溜所の復活を宣言しました。
彼らは単なる「復活」ではなく、かつてのローズバンクが生産していたウイスキーの「完全再現」に挑戦しています。
しかし、それは難問の連続となっているようです。
施設内の蒸留設備はすでに盗まれてしまっており、当時のニューメイクスピリッツを探し回るも、スピリッツは見つからず。
具体的なレシピの記録も残っておらず、手探り状態での試行錯誤が続いている為、十分に熟成されたウイスキーを飲めるのはまだ当分先になりそうです。
「完全再現」という夢に向けて日々、挑戦を続ける職人さんを応援しつつ、ウイスキーの完成を待ちたいですね。
新蒸留所はビジターセンター併設の立派な施設を計画しているようです。
Rosebank蒸留所の公式サイトURL【海外サイト】
ポートエレンは今!
【新蒸留所完成予定イメージ】
2017年10月にオーナーであるディアジオ社より復活が発表されました。
2022年に入り、カリラとラガブーリン蒸留所での経験を持つアレキサンダー・マクドナルド氏のマネージャー就任が発表。
かつての建物はほとんど現存しない為、新しい建物の建設計画からはじめる必要がありました。それでも、キルン塔など修復可能な部分は新蒸留所でも利用するようです。
ポットスチルは2組の独立した設備を計画しており、1組はかつてのポートエレンの味わいを再現するために稼働し、もう1組は新しい味わい生み出すためのものだそうです。
まだ、稼働開始の発表はされていませんので、妄想を膨らませながらゆっくり待ちたいですね。
まとめ
・スコッチウイスキーの世界ではもはや伝説の存在となっていた「ブローラ蒸留所」「ローズバンク蒸留所」「ポートエレン蒸留所」が復活を宣言しました!
・昨今の世界的なウイスキーブームを追い風に、熱烈なファンの要望と、商業的な思惑が一致し、操業再開に踏み切ったようです!
・ブローラ蒸留所は2021年5月に稼働開始しました、ローズバンク蒸留所とポートエレン蒸留所はまだ稼働しておらず、試行錯誤の真っ最中のようです!
いかがだったでしょうか?
伝説の3蒸留所に少しでも興味を持って頂けたら幸いです。
『BAR10』ではこれからも、ウイスキーにまつわる楽しい情報を発信していきますので、お見逃しなく!