テネシーウイスキーの歴史と代表的な銘柄について調べてみた!

突然ですが、あなたはテネシーウイスキーを飲んだことがありますか。
実は、日本でも有名なジャックダニエルは、このテネシーウイスキーに分類されるのです。

スコッチやバーボンではなく、テネシーウイスキーとわざわざ銘打っているのは、生産地や製法が独特のものであり、他のウイスキーと区別されるためです。それでは、テネシーウイスキーについて、紹介していきましょう。

テネシーウイスキーの発祥と歴史

テネシーウイスキーにはいくつかの定義がありますが、一番の定義は「アメリカ合衆国のテネシー州で造られること」というものです。つまり、テネシー州以外で造られたウイスキーは、テネシーウイスキーとは呼べないということです。

テネシー州はアメリカ本土の東寄り、大西洋側に近く、南東部に分類はされていますが、南北の位置関係でいうと丁度真ん中あたりに位置しています。1796年にアメリカ合衆国の16番目の州となり、1861年に起きた南北戦争でも主要な戦場となった州でもあります。「ミュージック・シティ」と呼ばれ、音楽業界の中心地として世界でも有名なナッシュビルを州都とし、他にも商工業の中心地であるメンフィスやノックスビルといった主要都市も抱えているのがテネシー州で、実際に行ったことはなくても、日本でも流行した「テネシーワルツ」という曲はおそらくご存じでしょう。

1775年から1783年にかけて行われたアメリカ独立戦争により、イギリスからの独立を勝ち取ったアメリカですが、1791年にウイスキー税が作られました。
戦争で疲弊してしまった政府の税制立て直しのために導入された税制ですが、ウイスキー生産者はこの税制から逃れるためにケンタッキー州やテネシー州へ移住し、その土地の気候に合ったトウモロコシを原料としたウイスキーを造るようになったのです。
当時のアメリカはイギリスから移民した東部の13州だけがアメリカであって、今で言うケンタッキー州やテネシー州はアメリカではない、つまり外国と同じ扱いだったため、こうした税金逃れが可能だったのです。
こうして、税制から逃れて始まったウイスキー造りが、後のバーボンウイスキーの誕生につながっていくことになります。

テネシー州のすぐ北にケンタッキー州があるという位置関係ですが、1861年の南北戦争ではテネシー州は南軍、ケンタッキー州は北軍と分かれて戦った結果、敗北した南軍に属していたテネシー州はかなり壊滅的な被害を被り、勝った北軍のケンタッキー州に対抗意識が生まれることになります。
これにより、テネシー州のウイスキー製造業者はバーボンウイスキーに対抗するかのように、テネシーウイスキーの製造に力を注いでいきます。
そして今でも、バーボンウイスキーの一種ではあるものの、テネシー州で造られたこと、製法がチャコールメローイングであることを条件として、「バーボンウイスキーではなく、テネシーウイスキーである」という強いこだわりを持ち続けているのです。

テネシーウイスキーの製造方法と特徴

アメリカで造られているウイスキーのことを総称して、アメリカン・ウイスキーと言います。
アメリカには連邦アルコール法(Federal Alcohol Administration Regulations)という法律があり、その中で以下のように規定されています。

「穀物を原料として発酵させ、アルコール度数95%以下で蒸溜、オークの容器で貯蔵し、アルコール度数40%以上で瓶詰めしたもの」

アメリカ国内で造られ、且つこの条件を満たすウイスキーは全てアメリカン・ウイスキーと呼ばれますが、さらに原料などの違いによりバーボンウイスキーやライウイスキー、コーンウイスキーなどに分類されています。
もちろんそれぞれのウイスキーについても原料の割合などが決められているのですが、この法律の中でのバーボンウイスキーとテネシーウイスキーの違いは、テネシー州で製造されたこと、チャコールメローイング製法で造られていることといった2つの項目がバーボンウイスキーにはなく、テネシーウイスキーにはあるというだけです。
この2項目以外の原料や蒸留方法などは全て共通項ですので、テネシーウイスキーはバーボンウイスキーと名乗っても、法律上は何の問題もないことになります。

テネシーウイスキーは一般的にはまろやかで甘みが感じられ、飲みやすいと言われています。あまり癖がないため初心者でも飲みやすいのは、チャコールメローイング製法で造られていることによると考えられています。
チャコールメローイング製法は、テネシー州産であるサトウカエデの木から作った木炭をまず細かく砕いてから濾過槽に敷き詰め、蒸溜したての原酒を一滴一滴、ゆっくりと濾過する製法のことです。
樽詰めする直前に行われるこの作業には、約10日間といった時間をかけているため、手間はもちろんのこと、費用もかかります。
しかし、サトウカエデの木炭によってゆっくりと濾過されて精製されることで、無駄な雑味が取り除かれるだけでなく糖類も加えられ、いかにもテネシーウイスキーといった風味とまろやかさが加えられるのです。
チャコールメローイング製法は、他の一般的なウイスキーの製造には用いられていないこともあり、テネシーウイスキーの特徴とも言われています。
ちなみに、このチャコールメローイング製法を考え実用化したのが、当時、蒸溜業を営んでいたあのジャックダニエルの創業者、ジャスパー・ニュートン・ジャック・ダニエル氏であり、「ジャックダニエルはバーボンウイスキーではない」と言っていたのは有名な話です。

テネシーウイスキーの代表的な銘柄

テネシーウイスキーはテネシー州で造られたものという条件があるため、バーボンウイスキーほどの種類はありません。
それでも飲みやすく有名なウイスキーがありますので、ここで紹介します。

ジャックダニエル ブラック

1859年にアメリカ政府の公認第一号認定を受けた蒸留所で、ジャック・ダニエル氏によって造られました。
1972年には蒸留所が国家歴史登録財に登録され、100年以上の長きに渡ってチャコールメローイング製法による製造を続けています。
テネシーウイスキーと言えばジャックダニエルと言われるほど、テネシーウイスキーの代名詞として世界中で飲まれているウイスキーのスタンダードボトルです。
クリアでいながらキャラメルのような甘く濃厚な味と香り、かすかにスパイシーな刺激といった深い味わいがあり、まろやかで風味のバランスがよいウイスキーです。
口当たりがよいため、ウイスキー初心者にもお勧めの1本です。

[itemlink post_id="3592"]

ジャックダニエル テネシーハニー

ジャックダニエルに様々なフレーバーを追加し、ウイスキーが苦手な人にも飲みやすく造られた1本です。
意外とファンが多い人気の銘柄で、別名ハニーウイスキーとも呼ばれています。
まるで蜂蜜やナッツのような甘い風味を持ち、ウイスキー独特の苦みや辛みが抑えられているのが特徴で、ロックやストレートよりも牛乳割りやジェラードにかけるなどの楽しみ方やウイスキーカクテル用の材料としての使い方もお勧めです。

[itemlink post_id="3593"]

ジャックダニエル ジェントルマンジャック

通常は1回のチャコールメローイング製法を2回行うことで、優しく上品で、かつ雑味が抜けて洗練されたクリアな味わいを楽しめるテネシーウイスキーです。
ジェントルマンの名の通りに口当たりがなめらかで、キャラメルやフルーツがかすかに香ると共に、ブラックよりも優しい舌触りが楽しめるのが魅力です。

[itemlink post_id="3594"]

ジャックダニエル シングルバレル

シングルバレルの名の通り、熟成させた原酒をブレンドせず、厳選した特定の1つの樽だけからボトリングされた1本です。
ジャックダニエルにはいくつかの種類がありますが、その全ての商品はいずれも同じタイミングで熟成を開始した、複数の樽の原酒をブレンドしています。
これは、樽が必ずしも完全に同じ状態ではないために、ブレンドした方が品質を平均化できることによります。
しかし当然原酒の中には出来の良い原酒もあり、確かにブレンドすることで平均化はできるというものの、そのままでも充分に素晴らしいウイスキーもあるため、このシングルバレルは誕生しました。
シングルバレルであるがゆえに、ボトルごとに微妙に味が違うというのが最大の特徴で、逆にその味の違いを楽しむこともできます。
厳選されただけあり、熟成によるキャラメルやバニラといった濃厚な甘みと、タンニンの持つ酸味がバランス良く、ゆっくりと芳醇な香りを楽しめます。

[itemlink post_id="3595"]

ジョージ・ディッケル No.8

1870年にジョージ・ディッケル氏がテネシー州で立ち上げた、その名もジョージ・ディッケル蒸溜所で造られているのがジョージ・ディッケルです。
過去何度か閉鎖されたものの、2003年に操業を再開し、現在も稼働している蒸留所で、伝統的なテネシーウイスキーを味わうことができるブランドとして、多くの人に愛されています。
ジャックダニエル同様、サトウカエデの木炭で濾過はするのですが、木炭の上に羊毛の毛布を敷いて行う「チルド・メイプル・メローイング」という名称の独自の冷却濾過製法を採用しています。
原料に占めるトウモロコシの使用比率が84%まで高められているため、アメリカンオーク樽のキャラメルやバニラといった風味とともに、トウモロコシが持つ優しい甘さと、柔らかでいながら芳醇な味わいを楽しむことができます。

[itemlink post_id="3596"]

ジョージ・ディッケル No.12

10年以上長期熟成させて造られているのが、このNo.12です。
ジョージ・ディッケルの特徴である豊かな甘味と奥の深いコクはそのままでいながら、オーク樽のバニラのような香りとスモーキーさを楽しめるのが魅力です。
長期熟成させたことによってなめらかな味わいになっており、重厚感とトウモロコシの香りが充分に楽しめる完成度の高い1本です。

[itemlink post_id="3598"]

ロリンズ テネシー ウイスキー

1904年に創業したロリンズの、世界的に評価の高いウイスキーです。
リンカーン郡製法という、地元の原料だけを使って少量ずつ仕込むという丁寧な造り方をしており、アメリカンホワイトオーク樽が持つ独特のスパイスの香りやバニラの香りが特徴です。
口当たりがよく、甘い風味のため初心者にもお勧めの1本です。

[itemlink post_id="3597"]

テネシーウイスキーの楽しみ方

テネシーウイスキーはウイスキーの中でも特に癖が少なく飲みやすいため、ウイスキー初心者にも飲みやすいウイスキーとして知られています。
中には「ジャックダニエル ハニーウイスキー」のように、蜂蜜やシナモンといったフレーバーを後から加えたフレーバードウイスキーがありますが、テネシーウイスキーよりもさらに飲みやすいため近年人気が高まっており、新たな生産者の参入が増加していると言われています。
初心者のウイスキーへの第一歩として、フレーバードウイスキーから始めてみるのもひとつの飲み方です。
ちなみにフレーバードウイスキーは、日本の酒税法ではリキュールに分類されています。

テネシーウイスキーそのものを楽しんでみたいというのであれば、やはりストレートやオンザロックをお勧めします。
もちろんトニックウォーターやソーダで割って飲んでも構いませんし、ウイスキーベースのカクテルにしてもおいしく飲むことができます。
とはいうものの、割って薄めてしまうことで当然アルコール度数は下がって飲みやすくはなりますが、同様に甘い香りや、樽独特の風味といった特徴も薄まってしまうことになります。
せっかく飲みやすいウイスキーですので、まずは舐める程度に口に含み、すぐに飲み込まずに舌で味わってみてください。
横にチェイサーさえ置いておけば、いつでもリセットできますので、初心者でも一度は試してみる価値はあります。
特に、よく比較されるケンタッキーバーボンとは、全く異なるウイスキーと言っていいほどに傾向が違いますので、テネシーウイスキーとケンタッキーバーボンを並べて、ゆっくりと味の違いを比べてみるのも楽しみの一つです。

まとめ

アメリカの大地で、ケンタッキーとは隣り合わせの地で造られながら、戦争のせいで別の道を歩んできたテネシーウイスキー。
圧倒的にバーボンよりも数が少ないテネシーウイスキーが、これだけ世界で愛されているという事実は、疑いようのない事実です。
飲みやすさを追及し、その製法を今でも頑なに守って造られているテネシーウイスキー、そのボトルを目の前に置いて、是非アメリカの地図を開いてテネシー州を探してみてください。
決して大きくもなければ小さくもない州、このウイスキーは、そこから来たのです。

よい1杯を。

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事