高額な国産ウイスキーはよく話題になり、ハイボールにロック、水割り、カクテルなど以前よりもウイスキーという言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。様々な楽しみ方で気軽に楽しめるお酒「ウイスキー」とはどのようなお酒か、そこから紐解いていきたいと思います
そもそもウイスキーとは
ウイスキーの定義とは?ほかのスピリッツとの違いについて
皆様のウイスキーのイメージでは大麦麦芽をはじめとする穀類を使って樽熟した蒸留酒、というイメージがあるのではないでしょうか。
まず日本の酒税法を確認してみましょう。
ウイスキー:発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの
上記のように表記があります。
ウイスキーというと樽で熟成されているイメージがありますが、上記分類に基づくと蒸留所などでリリースしているニューポットなどもしっかりとウイスキーに分類されるようです。
ヘネシーなどで知られるブランデーはブドウを原料とする果実酒を蒸留し作られる蒸留酒です。
また、スピリッツとはウイスキーやブランデーをはじめとした酒類に該当せず、エキス分が2度以上のもの、と設定されています。
同じく小麦やカラスムギなどの穀物を原料とする蒸留酒にコルンなどがありますが、こちらはスピリッツに分類されていますし、日本で作られている焼酎なども麦を原料としていますがこちらはそれぞれ作り方によって連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎という風に分類されています。
上記のことから、ウイスキーの広義はスピリッツの中に位置していることがわかります。
国によるウイスキーの原料の違いとは?
前項ではウイスキーとはかなり広い定義を持つ蒸留酒であることがわかりました。
しかし穀物を原料とする、とありますが、どのような穀類を原料としているのか国ごとに紹介していきたいと思います。
アイルランド:大麦麦芽を中心とする穀類が原料。古い作り方ではライ麦、オート麦、カラスムギなどを原料としたアルコールを大きなポットスチルで蒸留するシングルポットスチルウイスキーなど特徴的なウイスキーがあります。
スコットランド:大麦麦芽を原料としたウイスキーが有名です。ブレンド用に使われるウイスキーにはトウモロコシや小麦などの穀類が使用されています。
アメリカ:トウモロコシを主体とし、ライムギを使ったバーボンウイスキーで知られています。
カナダ:ライ麦を主原料としてトウモロコシなどを主体としたカナディアンウイスキーが多いですが、一部大麦麦芽を原料としたウイスキーも作られています。
日本:スコットランドのウイスキー蒸留をベースとしているため大麦麦芽を原料としたウイスキーやブレンドに使われるトウモロコシ、小麦を主原料としたウイスキーが多く作られています。
上記のように国・伝統によって使われる原料が違い、また、求められる味わいも変わっています。
次項ではそれぞれ原料の違うウイスキーの作り方や味わいの違いについてお話します。
モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキーそれぞれの特徴とは
前項でも触れたウイスキーの原料の違い。それがそのまま味わいの違い、国の伝統を背負ったブランドになっていきます。
本項では原料によっての分類、呼び名について触れていきます。
モルトウイスキーとは
やはり一番高額で販売されることが多く、原酒僅少などで価格高騰、プレミア化などが話題になるウイスキーです。
古くはスコットランド・アイルランドで作られており、水に浸して発芽させた大麦麦芽を乾燥させてから粉砕し、糖化層(マッシュタン)と呼ばれる容器で糖化させてから、発酵後にポットスチルスチルというお椀をひっくり返したような形の単式蒸留器で蒸留・樽熟して製造されるウイスキーです。
芳醇で力強い味わいのものが多く、長い熟成によって驚くほど複雑で高貴な味わいになっていきます。
スコットランドでは発芽させた麦芽を乾燥させた際にピート(泥炭)を使うことによって独特のスモーキーな香りが完成後のウイスキーにも感じられます。現在ではピートを使って乾燥させる蒸留所も少なくなりましたが、アイラ島というスコットランド西側の島では今でも多くの蒸留所がピートを焚き込み、ウイスキーファンを病み付きにさせています。
アイルランドでは多くの場合乾燥させる際に石炭を使い、ピュアな味わいのウイスキーとして定評を得ています。
かつては密造酒として多く作られていた樽熟を行わない蒸留酒でいたが、税吏からの思い徴税を逃れるためにたまたま持っていた木樽に隠していた密造酒が美味しく熟成していたことから樽熟成をさせることが定着していったという説も。
モルトウイスキーの中には単一の樽からボトリングされたシングルカスク、一つの蒸留所で作られたモルトウイスキーを使用したシングルモルトウイスキー、複数の蒸留所のモルトウイスキーをブレンドしたブレンデッドモルトウイスキーなどがあります。
後述するブレンデッドウイスキーの原料としても多く使われています。
グレーンウイスキーとは
先ほど説明したモルトウイスキーと比べると目にする機会は少ないかと思われます。
グレーンウイスキーとは大麦麦芽以外の穀類、小麦やライ麦、トウモロコシなどを主原料としたウイスキーのことです。
アイルランド、スコットランドでは多くの場合ブレンデッドウイスキーの原料として使われており、モルトウイスキーと比べると軽い酒質で、原料由来の甘い香りがします。
アメリカで作られているバーボンやカナダで作られているカナディアンウイスキーもグレーンウイスキーに属しています。バーボンはトウモロコシを51%以上使用し、連続式蒸留機で高いアルコール度数に精製され、内側を焦がした新樽で熟成されることによりオイリーな甘い香りが特徴的です。
ブレンデッドウイスキー
一番親しみのあるウイスキーではないでしょうか。
日本で作られるハイボールも多くがブレンデッドウイスキーを用いており、味わいもモルトの重厚感とグレーンウイスキーの軽やかさを併せ持ったものが多いです。
偉人、逸話のあるウイスキー銘柄
今までウイスキーについておさらいさせて頂きましたが、実際に有名なウイスキーや、ウイスキーにまつわる逸話について、実際の銘柄を絡めて紹介していきます。
チャーチルのルーティンウイスキー”ジョニーウォーカー”
https://www.johnniewalker.com/ja-jp/our-whisky/johnnie-walker-colours/black-label/
近代イギリスを率いた首魁、歴史上もっとも偉大なイギリス人ともいわれています。
競馬をはじめとして、マティーニなど様々な方面に明言を残しているチャーチル氏ですが、朝に起きたらまず飲んでいたのがジョニーウォーカー。
ストライド・マンと呼ばれる特徴的なシンボルが記憶に残る伝統的なブレンデッドウイスキーです。
スタンダードのジョニーウォーカー 12年 ブラックラベル では絶妙なバランスの中に仄かなピートが感じられ、チャーチル氏が毎朝飽きずに飲んでいたという話にも納得の味わいです。
鉄の女が愛したシングルモルト”グレン ファークラス”
https://milliontd.co.jp/glenfarclas/
その保守的かつ強硬な政治姿勢から”鉄の女”の異名をもつマーガレット・サッチャーが愛飲したウイスキーがあります。
グレン ファークラス105プルーフ。アルコール度数60%とハードリカーの中のハードリカーです。
当時日本でのウイスキー価格は酒税法の関係上1万円を超えるものが少なくなかった中、「アルコール度数が同じ焼酎とウイスキーの酒税が大きく異なるのは不当であり、不公平だ」と、時の大蔵大臣、竹下登を説き伏せ1989年の酒税法改正につながっていきます。
一族経営を崩さず、高品質のシェリー樽熟成にこだわった蒸留所の姿勢も彼女の政治学と一致しています。
アイゼンハワー大統領が世に広めたバーボンウイスキー
アイゼンハワー大統領が世に広めたあと、ルーズベルトやアメリカの歴史上、選挙で選ばれた最も若い大統領と言われており今なお高い人気のあるJ・F・ケネディ氏などが愛飲していたバーボンウイスキー”ワイルド・ターキー”。
当時はアルコール度数50度ほどで、低い温度で蒸留されることから柔らかくトウモロコシや焦がした樽が香る現在では定番と言える位置にあるバーボンウイスキーです。
明治から日本の政治家に愛されたウイスキー”オールドパー”
かつて岩倉具視が遣欧使節として外遊から帰った際に明治天皇へ献上されたウイスキーがこちらのオールドパー。
その逸話から名宰相と呼ばれた吉田茂も生涯愛し、その後田中角栄も愛したウイスキーとして知られています。
有名な話ですが、オールドパーはボトルを斜めに傾けた状態でしっかりと立つことから、”倒れない”という点も政治家に愛された理由になったのかもしれません。
まとめ
ウイスキーは著名人の中でも、動乱の時代の政治家に愛されていたお酒だったということがわかりますね。
密造酒として歴史を始めた熱いウイスキーの血は今でも変わらずに受け継がれていることと思います。
少しだけ、思い馳せればより良い夜を楽しめることと思います。
それぞれのウイスキーを飲み比べてみても楽しいかもしれません。